社交不安障害とは
社交不安障害とは、対人場面で過度の不安を感じてしまう障害です。
たとえば、人前でのプレゼンやスピーチ、雑談、電話、外での食事やトイレなど、人に見られる場面で強い不安を感じます。
社交不安障害を考える場面
たとえば、子どもの頃から緊張しやすく、10代になってその傾向が強まった方を考えてみます。あるとき、クラスの前で発表しようとして頭が真っ白になり、笑われてしまいました。
それ以来、人前に出ること自体が不安になり、次第に人と会う場面を避けるようになって、家からあまり出られなくなる——こうした経過をたどることがあります。
発症の背景
社交不安障害の背景には、次のような要素が関わっていることがあります。
- 生まれつきの敏感さ:不安を感じやすい性質や人目を気にしやすい傾向。
- 経験の影響:幼少期の辛い経験や恥ずかしい思い出。
- 脳の不調:不安を司る扁桃体の不調やセロトニン不足など。
社交不安障害の疫学
社交不安障害の発症率は、日本では3%とされています。
10代での発症が多く、男女比は1:2で女性に多いのが特徴です。治療を受けないままだと、長期にわたって慢性的な経過をたどることが多くあります。
社交不安障害の診断基準(DSM-5)
- 外の人に注視される社会場面での著しい恐怖や不安
- 他人から否定的な評価を受けることへの恐怖
- 社会的状況でほぼ常に恐怖・不安が誘発される
- 社会的状況を回避する、または耐える
- 不安の強さが実際の状況に比べて過剰
- 恐怖や不安、回避が6か月以上続く
- 社会生活に支障をきたす
- 物質や他の病気による症状ではない
- 他の精神疾患では説明できない
- 他の病気があっても過剰な不安
社交不安障害の治療
治療の基本は「薬物療法」と「精神療法」の二本柱です。
薬物療法
- 抗うつ薬(SSRI):治療の第一選択で、定期的に服用することで、不安を少しずつ減らしていきます。
- 抗不安薬:不安が強まりそうな場面に備えて、事前に頓服で使用します。
精神療法
- 脱感作法:不安な場面に少しずつ慣らしていく方法です。
- 認知再構成:完璧主義的な考え方を見直し、自己肯定感を高めていきます。
- 不安と共に動く:不安を完全になくそうとするのではなく、不安を抱えたままでも行動することに重点を置きます。たとえば、いきなり大勢の前で話すのではなく、少人数で短く話す場面から始めるなど、小さな一歩を積み重ねていくと取り組みやすくなります。
社交不安障害の病期と対応
前期
抗うつ薬の効果を待ちつつ、リラックス法を行う準備をします。
中期
薬の効果を土台に、脱感作法を実践し、苦手な場面を克服します。
後期
成功した後、薬を減らしつつ、脱感作法を継続し、活動範囲を広げます。
まとめ
社交不安障害は、対人面での著しい不安や恐怖を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。
鑑別疾患や併存症にも目を向けながら、適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。
早めに治療を始めること、そして続けていけるサポートが大切です。
参考文献
日本精神神経学会:永田利彦先生に「社交不安症(社交不安障害)」を訊く
執筆・監修
精神保健指定医 野口晋宏